ストーリーとしての競争戦略

楠木建著ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件

 

最近読んだマーケティングの本の中では一番勉強になりました。

 

武術研究家の甲野善紀さんは、優れた武術家の強さの正体は何かと問われて、「一対一で向きあっていても、実際は一対一の勝負ではなく、身体のあらゆる部分を動員することによって一対百の勝負に持ち込むこと」だ。

 

ホームランではなく、ヒットをねらう。ビジネスは野球と同じで、できるだけ高い打率を目指すのがベストだ。なぜなら永遠に続く大ヒット製品やテクノロジーなど存在しないからだ。

 

天国に行くための最良の方法は、地獄に行く道を熟知することである。

 

スターバックスのコンセプト。1980年代に入って、アメリカは価値観の断片化が進んだ結果、過剰なハイテンション社会になりました。職場では競争のプレッシャーが強く、家庭でもいろいろな問題があります。ドイツのビアガーデンやイギリスのパブ、フランスやイタリアのカフェのようにヨーロッパには「人々が安心して集える避難場所」が確立していますが、アメリカにはそうした場所が希薄でした。つまり、コーヒーを売るのではなく、くつろげる場所を提供する。

 

アマゾンのコンセプトは物を売るのではなく「人々の購買決断を助ける」こと。このコンセプトに基づいて、アマゾンはその顧客が過去に同じものを買ったかどうかを知らせるサービスを始めました。以前に買った商品をもう一度買おうとした場合「あなたはこの商品を以前に買いました。もう一度買いますか?」というメッセージを表示するというものです。このサービスを提供すると短期的に売上を失います。しかし、アマゾンのコンセプトが人々の購買決断を助けることにあるのだとすれば、当然のサービスです。こうした取組みを重ねることによって、アマゾンの意図するコンセプトが口コミを通じて顧客に正しく浸透し、長期的には売上増をもたらしました。